7月2日午後に実施した佐賀県多久市の視察研修報告です。
長文ですが、ご関心のある方にお読みいただければ幸いです。なお、戸田市議会議会事務局に提出した報告書には、多久市役所・市議会のご担当者名を記しておりますが、ここでは省略いたします。また、報告書PDFや配付資料等は後日、令和会ホームページに掲載いたします。
1.視察の目的
戸田市教育委員会は、現在、教育改革を推進中であり、教育内容については、来るべきSociety5.0社会での生きる力、稼ぐ力をつけるPEER教育(プログラミング教育・英語教育・経済教育・リーディングスキル教育)の実施や、他者の気持ちを理解し共感力を高めるセサミストリートカリキュラムを初めとした非認知スキルの修得などに取り組んでおり、また、部活動の在り方等を含めた、教職員の働き方改革にも取り組んでいる。戸田市教育委員会の取り組みは、他地域からも視察が相次ぐ先進的なものとして知られているが、他の先進自治体に学ぶ余地もまだあるのではないかと考える。
今回、視察先に選んだ佐賀県多久市は、先日、東京・青海展示場で開催された第10回学校・教育総合展においても横尾市長自ら多久市のICT教育についてご講演されていたように、この分野における先進自治体として知られている。加えて、ICTを活用し教職員の働き方改革にも取り組んでいる。また、市内の小中学校を複数の義務教育学校に再編し小中一貫教育を実施、あわせてコミュニティ・スクール制度を導入している自治体である。
ICT教育、教職員の働き方改革、小中一貫教育、コミュニティ・スクール制度など、多久市に学ぶことで、戸田市の教育改革のさらなる充実について知見を得ることを今回の視察の目的とする。
2.視察概要
テーマ :ICT教育について
視察日 :令和元年7月2日(火曜日)午前1時から3時
場 所 :多久市役所
配付資料:多久市の教育について(FAX)
参加議員:戸田市議会令和会議員(伊東秀浩・山崎雅俊・斎藤直子・峯岸義雄・林冬彦)
3.視察の内容
(1)多久市教育委員会より挨拶があった。
(2)令和会団長より返礼挨拶があった。
(3)多久市長が会場に到着された。
(4)資料をもとに、本日の研修のキーワードついて説明があった。キーワードは「伝統ある実践・多久学」「コミュニティスクールの実践(特に『自己肯定感』、その狙いの中でICT教育がある)
(5)資料をもとに多久市の教育について、説明があった。
質疑応答などでは、横尾市長も説明された。
主な内容については添付資料「多久市の教育について」を参照されたい。
1)はじめに
・約300年前に多久に開かれた学問所「東原庠舎(とうげんしょうしゃ)」の歴史的説明
・現在、3校ある義務教育学校の校名には、それぞれの最初に「東原庠舎(とうげんしょうしゃ)」を冠している。
2)多久市の教育のキーワードは「自己肯定感」、郷土学「多久学」の実践
・孔子の教えが息づく多久市では、現在、郷土学としての「多久学」を核に、平成25年度から小中一貫教育、平成28年度からコミュニティ・スクールの取り組みを進め、平成29年度からは義務教育学校に移行した。
・多久学の理念は、地域に誇りをもち地域をスタートとして世界に羽ばたくこと。
・多久学として、「論語カルタ・論語検定の実施」「郷土の賢人の学習」「伝統行事への参加」「史跡・特産物の学習」などを行っている。
3)コミュニティ・スクールから義務教育へ
・異学年の交流が活発になり、子どもたちが落ち着いてきた(特に中学生)
・三間「時間、空間、仲間」の減少が危惧されていることから部活にも力を入れる
・健康増進の取り組み
4)多久市教育の基本方針と施策目標(資料5頁〜参照)
・目指す目標は「自己肯定感に満ちた子」
・義務教育学校では「区割り」を重視
低学年:1〜4年 学習の基礎・定着
中学年:5〜7年(小学5年生〜中学1年生) 学習の充実・深化
高学年:8〜9年(中学2〜3年生) 進路の選択 学習の発展・活用
・「学び舎」という位置づけ「知・徳・体」のバランスを重視
知:学力向上、英語教育、教育情報化
徳:多久学(論語・郷土教育)、人権・同和、特別の教科、道徳
体:体力向上(部活動・健康教育)
5)多久市のICT利活用の推進(資料8頁参照)
・特筆すべきは、平成30年度から「学び方改革及び働き方改革の一環としてテレワークの導入」を行ったこと。
・テレワークの導入は、フルクラウド環境の導入で実現した。
・セキュリティ研修を重視して行っている。
6)全国初となる「学習系・校務系のフルクラウド化」で、常に「最新」が使える教育ICT環境を実現(資料11頁〜参照)
・先生のパソコンにはデータは残らないので、先生方が安心して、パソコンを持ち出し、自宅等で仕事をすることができるようになった。
・先生がた同士や学校間で、誰かが作った教材が共有利用されるようになった。
・ペーパーレスの会議が当たり前になった。
・多久市をはじめ、佐賀県では電子黒板が標準なので、パソコンから電子黒板に直接映し出すスタイルが標準。
・以前と比べて、中学校で年間16時間、先生方に時間の余裕が生まれた。
・管理職の時間の削減(特に教頭先生)が実現した。
・定時退勤日が守られるようになった。
4.知見と考察
ICT教育をテーマにした、午後の多久市視察研修では、「自己肯定感」「多久学」「フルクラウド化で実現した教職員の働き方改革」が特に印象的だった。
「自己肯定感」は、多久市における9年間の一貫教育の中での目標である。
「多久学」は、多久市の歴史と強くリンクしており、論語を題材にした「論語カルタ」を使うことで中学生で100以上の論語を暗唱できるようになり、子供たちの道徳的感性にも論語の教えが根付くようになる。また、孔子廟と同時期の約300年前に開設された「東原庠舎」から多くの偉人が世にでて、明治維新後の日本を支えたという史実を学ぶとともに、郷土に残る史跡や特産物の学習を行うことで、多久市の子供たちは先人への憧れと郷土への誇りや愛着を感じるようになるのだと思った。
これら「自己肯定感」と「多久学」が結び付き、「地域に誇りをもち地域をスタートとして世界に羽ばたく」人材を育てていこうというのが多久市教育の思いである。
一方、教職員においては、全国初となる「学習系・校務系のフルクラウド化」により、常に「最新」が使える教育ICT環境が実現された結果、教職員の働き方改革、特に教頭先生の勤務時間削減に繋がったことに驚きを禁じ得なかった。
全国的に、コミュニティ・スクール導入に伴い、学校と地域の調整にあたる教頭先生の勤務時間が増える中、その削減が大きな課題とされているが、この分野で結果をだせるのが「フルクラウド化」環境であることが示された。
戸田市の教育においても、全国的に注目される様々な先進的な取り組みが行われているが、「自己肯定感を生み出すための仕組み」開発や「学習系・校務系のフルクラウド化」は、戸田市の教育の質をさらに一段押し上げるものである。この辺りを、戸田市の現状を踏まえながら、今一度、考えてみたいと思う。
今回の多久市における午前・午後の視察研修では、横尾市長が教育について熱く語られ、説明くださった。横尾市長は、戸田市の戸ヶ崎教育長との親交も厚く、そのおかげだったと思うが、公務多忙の中、戸田市のために時間を割いてくださった。横尾市長はじめ多久市の職員の方々に心より感謝申し上げる次第である。
(報告者:令和会 林冬彦)
横尾多久市長を囲んで令和会議員一同
(多久市議会議場)
◆関連情報
・戸田市の教育改革について
・戸田市の教育改革!進む、産官学民との連携
(広報戸田市2019年5月号)
・佐賀県多久市
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