本日の東京新聞1面に「海の森」五輪後不安 ボート・カヌー団体8割『拠点にせず』 波風高い/経費懸念 本紙調査」という記事が大きく掲載されました。
埼玉県ボート協会と戸田漕艇場監督会は、これまでに日本ボート協会に、新設される「海の森水上競技場」が塩分のある海であること、波や風や絶え間ない航空機の離発着という問題から公正な競技ができないという意見書を提出していていましたが、まったく無視されてきたという経緯がありました。
また、費用の面でも、代替案の彩湖(戸田市)では50億円で可能とシミュレートされているにもかかわらず、東京湾でその約10倍にあたる490億円以上の巨費をわざわざかけようとしているのも不可解です。

(東京新聞 2016年1月13日 1面)

(東京新聞 2016年1月13日28面)
(参考)
埼玉新聞「五輪ボートは彩湖で 戸田コース監督会が意見書 日本協会に『改心』迫る」(2015年3月1日)
http://blog.todakouen.jp/archives/51607562.html
埼玉新聞「戸田市長『現場無視 納得いかぬ』五輪ボート会場「海の森」決定で 日本協会幹部と面談」(2015年4月21日)
http://blog.todakouen.jp/archives/51587051.html
東京新聞の記事、東京新聞WEBでも公開されています。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016011390071241.html
2020年東京五輪・パラリンピックでボートとカヌーの競技会場として新設される「海の森水上競技場」(東京都)の大会後の利用について、本紙が都内の競技団体などにアンケートしたところ、約八割が練習拠点を移すつもりはないと答えた。都は競技団体を呼び込みたい考えだが、巨額の工費、強い風や波による競技面での障害に加え、五輪後の利用でも不安をのぞかせる結果となった。(中沢誠)
アンケートは昨年11〜12月、埼玉県戸田市の戸田漕艇場など都内近郊で練習する大学や社会人のボートチーム37団体と、都カヌー協会に加盟する8チームの計45団体に実施。ボート31団体、カヌー6団体が回答した。
この結果、「海の森に拠点を移したい」と答えたのは1団体(3%)にとどまり、「今のままでいい」が29団体(78%)。「どちらとも言えない」は7団体(19%)だった。
今のままでいい理由(以下、複数回答)は「交通アクセスがいい」「移転コストが心配」「水上競技場の風や波が心配」が目立った。逆に、移したい理由は「手狭」「施設の老朽化」など。
海の森に求める条件としては「艇庫の整備」が最多で、「風や波を防ぐ対策」「移転経費の補助」が続いた。懸念として「維持管理費」「一般利用とのすみ分け」を挙げる団体が多かった。
海の森に拠点を移す場合、現在は戸田漕艇場近くにある艇庫や合宿所を新設する必要がある。東京湾の埋め立て地で強風にさらされやすいため、横風を受けたり、垂直護岸に跳ね返った波が消えにくいとの懸念も。アクセスも課題で、最寄りの東京テレポート駅からバスが30〜60分に1本しか走っていない。
海の森は、都が491億円をかけて建設。大会後はボートとカヌーの競技場として活用するだけでなく、強化の拠点やレクリエーションの場とする構想を描く。都の内部資料によると、多くのチームが利用している戸田漕艇場からの移転を想定していた。
都は17年3月までに後利用の具体的な運営計画をまとめる予定で、都オリンピック・パラリンピック準備局は「戸田で練習したくても狭くて参入できなかったり、戸田の練習環境に満足していなかったりする団体にとって、海の森のニーズはある」と説明している。
<戸田漕艇場> 1940年の東京五輪(日中戦争で開催返上)のため、荒川沿いに整備。65年東京五輪ではボート会場となった。五輪後は国内の主要なボート大会を実施し、40近いボートやカヌーの競技団体が練習拠点にしている。長さ2000メートルで6レーンを備えたコースだが、現在の国際規格を満たしておらず、2020年五輪での使用は見送られた。
巨額の工費をかけて建設する「海の森素井王競技場」(東京都)は、2020年五輪後も友好に活用されるのか。本誌アンケートで移転に慎重な考えを示したボートとカヌーの競技団体のほとんどは、戸田漕艇場(埼玉県戸田市)で練習している。情報公開請求で入手した資料では、都は戸田漕艇場にあるすべての艇庫が海の森に移るよう、競技団体に要請していた。
都の資料によると、日本ボート協会は14年8月、都から後利用に関するヒアリングを受けた。協会側は「戸田漕艇場を利用している団体の一部は海の森水上競技場に移行するだろう。なぜなら戸田漕艇場は利用者数過多で、ボートの練習ができる状態にないから」と発言。
国際ボート連盟を交えた三ヶ月後の会合では、協会は「すべての船をいっぺんに移動させることは現実的ではない。当初は通って練習するというクルーがたくさんいると考えられる」との見解も示した。
これに対し、都側は移転に強いこだわりを見せ、採光を迫った。「戸田にあるすべての艇庫を海の森に移すくらいの考えてNE(協会)にも取り組んでもらいたい。通うという状況が状態化してしまうと、艇庫がこないということにもなりかねない」
都オリンピック・パラリンピック準備局の小室晶子担当部長は、本紙の取材に「過去にそういう発言はあっただろうが、戸田の競技団体がすべて移らなくても新規参入のニーズもあり、海の森がガラガラになることは想定していない」と説明する。
都は「練習環境がよければ移ってくる」とも話しているが、アンケートでは風と波が競技に与える影響、海水による舟の劣化など懸念が多く寄せられた。東京湾の埋め立て地にあり、現在、最寄り駅から30〜60分に1本のバスしか走っていない交通アクセスの対策も不透明だ。
開示資料では、都自体も後利用の不安をのぞかせている。14年5月の協会側との会合では、都の担当者は「悲観的な見方もある。交通の便が悪くて普段人が来るところではない。うまく人が来るような工夫をしないと誰も来ないような気がする」と語っている。
一方、戸田漕艇場の地元も困惑気味だ。戸田市の神保国男市長は、戸田漕艇場が1964年五輪で使われた経緯に触れ、「ボートの街として地域に定着しており、今後も戸田を利用してもらいたい」と抵抗感を示す。
埼玉県ボート協会と戸田漕艇場監督会は、これまでに日本ボート協会に、新設される「海の森水上競技場」が塩分のある海であること、波や風や絶え間ない航空機の離発着という問題から公正な競技ができないという意見書を提出していていましたが、まったく無視されてきたという経緯がありました。
また、費用の面でも、代替案の彩湖(戸田市)では50億円で可能とシミュレートされているにもかかわらず、東京湾でその約10倍にあたる490億円以上の巨費をわざわざかけようとしているのも不可解です。

(東京新聞 2016年1月13日 1面)

(東京新聞 2016年1月13日28面)
(参考)
埼玉新聞「五輪ボートは彩湖で 戸田コース監督会が意見書 日本協会に『改心』迫る」(2015年3月1日)
http://blog.todakouen.jp/archives/51607562.html
埼玉新聞「戸田市長『現場無視 納得いかぬ』五輪ボート会場「海の森」決定で 日本協会幹部と面談」(2015年4月21日)
http://blog.todakouen.jp/archives/51587051.html
東京新聞の記事、東京新聞WEBでも公開されています。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016011390071241.html
「海の森」五輪後に不安 ボート・カヌー団体8割「拠点にせず」
本誌調査 波風高い/経費懸念
東京新聞 2016年1月13日 1面
本誌調査 波風高い/経費懸念
東京新聞 2016年1月13日 1面
2020年東京五輪・パラリンピックでボートとカヌーの競技会場として新設される「海の森水上競技場」(東京都)の大会後の利用について、本紙が都内の競技団体などにアンケートしたところ、約八割が練習拠点を移すつもりはないと答えた。都は競技団体を呼び込みたい考えだが、巨額の工費、強い風や波による競技面での障害に加え、五輪後の利用でも不安をのぞかせる結果となった。(中沢誠)
アンケートは昨年11〜12月、埼玉県戸田市の戸田漕艇場など都内近郊で練習する大学や社会人のボートチーム37団体と、都カヌー協会に加盟する8チームの計45団体に実施。ボート31団体、カヌー6団体が回答した。
この結果、「海の森に拠点を移したい」と答えたのは1団体(3%)にとどまり、「今のままでいい」が29団体(78%)。「どちらとも言えない」は7団体(19%)だった。
今のままでいい理由(以下、複数回答)は「交通アクセスがいい」「移転コストが心配」「水上競技場の風や波が心配」が目立った。逆に、移したい理由は「手狭」「施設の老朽化」など。
海の森に求める条件としては「艇庫の整備」が最多で、「風や波を防ぐ対策」「移転経費の補助」が続いた。懸念として「維持管理費」「一般利用とのすみ分け」を挙げる団体が多かった。
海の森に拠点を移す場合、現在は戸田漕艇場近くにある艇庫や合宿所を新設する必要がある。東京湾の埋め立て地で強風にさらされやすいため、横風を受けたり、垂直護岸に跳ね返った波が消えにくいとの懸念も。アクセスも課題で、最寄りの東京テレポート駅からバスが30〜60分に1本しか走っていない。
海の森は、都が491億円をかけて建設。大会後はボートとカヌーの競技場として活用するだけでなく、強化の拠点やレクリエーションの場とする構想を描く。都の内部資料によると、多くのチームが利用している戸田漕艇場からの移転を想定していた。
都は17年3月までに後利用の具体的な運営計画をまとめる予定で、都オリンピック・パラリンピック準備局は「戸田で練習したくても狭くて参入できなかったり、戸田の練習環境に満足していなかったりする団体にとって、海の森のニーズはある」と説明している。
<戸田漕艇場> 1940年の東京五輪(日中戦争で開催返上)のため、荒川沿いに整備。65年東京五輪ではボート会場となった。五輪後は国内の主要なボート大会を実施し、40近いボートやカヌーの競技団体が練習拠点にしている。長さ2000メートルで6レーンを備えたコースだが、現在の国際規格を満たしておらず、2020年五輪での使用は見送られた。
「すべての艇庫移す」「悲観的な見方もある」
都は旗振れど・・・
東京新聞 2016年1月13日 28面
都は旗振れど・・・
東京新聞 2016年1月13日 28面
巨額の工費をかけて建設する「海の森素井王競技場」(東京都)は、2020年五輪後も友好に活用されるのか。本誌アンケートで移転に慎重な考えを示したボートとカヌーの競技団体のほとんどは、戸田漕艇場(埼玉県戸田市)で練習している。情報公開請求で入手した資料では、都は戸田漕艇場にあるすべての艇庫が海の森に移るよう、競技団体に要請していた。
都の資料によると、日本ボート協会は14年8月、都から後利用に関するヒアリングを受けた。協会側は「戸田漕艇場を利用している団体の一部は海の森水上競技場に移行するだろう。なぜなら戸田漕艇場は利用者数過多で、ボートの練習ができる状態にないから」と発言。
国際ボート連盟を交えた三ヶ月後の会合では、協会は「すべての船をいっぺんに移動させることは現実的ではない。当初は通って練習するというクルーがたくさんいると考えられる」との見解も示した。
これに対し、都側は移転に強いこだわりを見せ、採光を迫った。「戸田にあるすべての艇庫を海の森に移すくらいの考えてNE(協会)にも取り組んでもらいたい。通うという状況が状態化してしまうと、艇庫がこないということにもなりかねない」
都オリンピック・パラリンピック準備局の小室晶子担当部長は、本紙の取材に「過去にそういう発言はあっただろうが、戸田の競技団体がすべて移らなくても新規参入のニーズもあり、海の森がガラガラになることは想定していない」と説明する。
都は「練習環境がよければ移ってくる」とも話しているが、アンケートでは風と波が競技に与える影響、海水による舟の劣化など懸念が多く寄せられた。東京湾の埋め立て地にあり、現在、最寄り駅から30〜60分に1本のバスしか走っていない交通アクセスの対策も不透明だ。
開示資料では、都自体も後利用の不安をのぞかせている。14年5月の協会側との会合では、都の担当者は「悲観的な見方もある。交通の便が悪くて普段人が来るところではない。うまく人が来るような工夫をしないと誰も来ないような気がする」と語っている。
一方、戸田漕艇場の地元も困惑気味だ。戸田市の神保国男市長は、戸田漕艇場が1964年五輪で使われた経緯に触れ、「ボートの街として地域に定着しており、今後も戸田を利用してもらいたい」と抵抗感を示す。
コメント
コメント一覧
独自調査をしたうえでの良い記事ですが、一点、彩湖整備案についても触れてほしかったですね。
この記事だけだと、「東京湾はイマイチだとしても、戸田市は規格上無理だししょうがない」と読めてしまうので。