今日はあの阪神淡路大震災から20年目の日です。

私はあの日、東京千代田区で働いていていましたが、その日は朝に会議があり、いつもより早く出勤しました。朝のテレビは観ておらず、職場についてから、何か神戸で大きな地震があったらしいと聞き、テレビをつけたところ、目に入ってきたのが倒壊したビルとあちこちから火の手があがる神戸・三宮を空から映した映像でした。



私はその一週間前まで神戸にいました。祖母が神戸市東灘区に住んでいて、また実家も当時は大阪府枚方市にあったため、帰省して、祖母のところに行っていたのでした。

子どもの頃から馴染んだまち、大学生の時によく遊びに行ったあの神戸の惨状に声もでませんでした。すぐさま祖母に電話をいれたのですが、当然のことながら繋がりません。実家にも繋がらなかったのですが、何度か掛けているうちに実家にだけは繋がりました。

大阪府枚方市は、大阪と京都の府境にある市で、神戸からは離れているのですが、それでも大きく縦揺れしたとのこと。当然、祖母の安否は確認できず、実家からは神戸に向かって、当時大阪に住んでいた弟が車で祖母のもとに向かいました。

普通なら車で2時間も掛からないのですが、あちらこちらから煙があがり、塀がこわれ、地割れが起こり、通行止めになっていたため、六甲の山の裏手からまわってなんとか祖母の住む神戸市東灘区住吉台にたどり着きました。8時間かかりました。

阪急岡本、阪神御影駅、JR摂津本山駅から山に登っていった場所に祖母の住む住吉台があり、その高層住宅に住んでいたのですが、給水塔は破裂し、玄関はゆがんで開かない状態だったそうです。もちろん停電です。

窓枠の鉄格子を外し、窓を割って部屋に入ったところ、祖母はなんとか生きていました。地震が起きたのは布団にくるまって寝ていた時でしたが、タンスが倒れていました。ただ、タンスの引き出しが先に出たためそれがつっかい棒になって、完全に下敷きにならなかったのが幸いしました。ただ、人形のガラスケースなどは割れて、枕元周辺に散らばっていて、首を切る危険はありました。

結果として、祖母は生きていたのですが、どうもこの地震の時に頭を打って内出血があったらしく、それがその後の痴呆が始まる原因になったようだと、後年、祖母が亡くなった後に言われました。

救出した祖母は枚方市の実家に移動させましたが、その後、荷物を取りに住吉台の家に行く必要があり、私も同行しました。夜になりましたが、電気が消えている暗い街中で幹線に沿って電気の付いていないビルが並んでいて、近づくとそのほとんどが一階部分がつぶれて傾いていました。

その中でも途中寄ったコンビニでは、お互い頑張りましょうねと店の方から声を掛けられ、つい涙ぐんでしまったのを思い出します。

私は阪神・淡路大震災の後、しばらくの間、東京から動くことができませんでした。もちろん、交通機関が寸断されていて行きにくいという状況もあったのですが、ある全国組織のパソコン通信のネットワークの責任者を仕事でしていたこともあり、当時、被災された方々や被災地を応援したいという方々とパソコン通信を介して連絡を取り合い、状況把握や物資不足の状況、ボランティアで提供されているお風呂の情報やいろんな支援情報のやりとりに携わっていました。そして、日本人のいざという時に発揮された助け合いの姿に感動していました。

あれから20年。震災後の神戸市の姿を見てきました。あちらこちらの公園に建設された仮設住宅、神戸港近くの場所に積み上げられていた崩壊した建物の残骸物、残骸を処理するプラントがあった埋め立て地の光景、火事で更地になってしまった場所、そんな場所が時間の流れとともに消えていき、街も再び戻りました。

ただし、街の姿は戻っても、被災された方の苦しみは続いています。商店街を復興したものの行政が復興のためにつくった複合ビルには客が来ず、資産価値も下がり、借金の重さに苦しみ続ける方々の姿もあります。

災害はやってくるもの。そのための備えは必要ですが、個人でできることをやるのは当然のこととして、地域で災害対応する仕組みが機能するよう備えることも重要。そして政治に携わる人にどういう人を選ぶかもとても重要なことになります。

阪神淡路大震災では、当時の村山首相(社会党)が自衛隊に救助要請命令を出すのが遅れ、後に国会答弁「なにぶん初めてのことで」と言って失笑を買いましたが、それで多くの助かったかもしれない命が助からなかったのです。備えや対応の仕組みがあっても、それを運用する人が党の理念に影響されていたり、危機対応する能力に乏しかったら、備えや対応の仕組みが働かず、命が失われます。

今日は阪神淡路大震災から20年。

昨年の発表では、この戸田市でも今後、首都直下地震に見舞われる可能性は十分にあります。災害を思いたくないけれども、備えは用意しなくてはならないわけで、今日もあらためて見直す機会としたいと思います。

(参考)総務省:首都直下地震の被害想定と対策について(PDF)