埼玉新聞朝刊に、先月、天皇陛下の心臓冠動脈バイパス手術を執刀された順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授のインタビュー記事が第一面に掲載されていました。

天野教授は、人工心肺装置を使わないで心臓手術を行うオフポンプ手術のトップドクターであり、なんと順天堂大学心臓血管外科と提携関係にある戸田中央総合病院でも手術等を担当されているそうです。インタビューは戸田中央総合病院に天野先生が来られた日に行われました。

戸田市に住む私たちの身近な病院で、これほどまで高い技術をもたれる医師が手術にあたられていることを知り、いざという時のことを考えると、ありがたいという気持ちが高まりますね。

天皇陛下が、手術前に3月11日の大震災の追悼式典に間に合うかどうか、ご自身のお体のことを差し置いて心配されていたということにも感動で、ますます尊敬する気持ちが深まりました。

amano
(埼玉新聞 2012年3月28日)


天野篤順大医学部教授に聞く 上

 天皇陛下の心臓冠動脈バイパス手術を先月執刀した、順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(56)が、埼玉新聞のインタビューに応じ「手術はパーフェクトだった。ご病気はコントロールできた。ただ、手術して良かったという満足感はまだ先だと思う。陛下ご自身から(お言葉として)出るまでは、心臓外科医としては緊張の糸は解けない」と語った。

(岸鉄夫)

■ オフポンプが前提

 主治医団の先生方は、陛下のために、免疫力が低下するような人工心肺装置を使う手術はしないという大方針があった。

 陛下は、2003年1月に前立腺がんの手術をされた。だから人工心肺を使う手術をすると免疫力が落ちる。人工心肺はあり得ない、というような医師を選択しなくてはならない。どんな状況でもちゃんとオフポンプでバイパスが作れる医師が必要だった。

 これまでにも東大の循環器内科の永井良三教授から、オフポンプ手術が必要な患者の手術を依頼されていた。私について、どういう手術をして、どういう結果になっているかを、永井教授がよくご存知なので、「この男なら」と私が選ばれたのだと思う。

■ 手術を決断

 (皇室医務主管の)金沢一郎先生から「2月10日に東大に来てくれ」と連絡があった。行くと、永井教授が「陛下を診察して、手術が最も適当と考えるが、(手術成功の)確実性はどうか」と聞かれた。

 2月11日にも東大へ行き、心臓カテーテル・冠動脈造影検査、心電図の結果を、1年前の同じ日に行った同様の検査と比較して検討した。その結果、動脈の狭窄が進行していることが分かった。

 陛下は、大震災の追悼式典(3月11日)のことをとても気にされていた。これから手術して式典に間に合うのかが問題になった。そこで、通常業務を圧迫しないようにという配慮もあり、2月18日の土曜日の手術が決まった。

 そのことは12日の朝、陛下が皇居にお帰りになる前に永井教授、金沢医務主管、東大心臓外科の小野稔教授、私の4人で陛下に説明した。陛下は「皆さんがそれでいいと言うのであれば」という感じだった。医師団の意見を尊重するとう姿勢だった。

■ 結果はパーフェクト

 東大の循環器内科としては。(手術)は当たり前のようにやって、なおかつ質の高い内容を要求してきた。全くの精密機械のように、術中の判断も正確で、トラブルもないことを要求された。

 4時間の手術。何時に始まったかは覚えていない。その結果はパーフェクトだと判断している。いったん手術室に入ると外部との連絡も取れない。血液の1滴も手術室に残さない厳重な雰囲気だった。

 手術の結果は、バイパスの血液がきれいに流れて、手術の痕の傷が1本残るだけが理想的。ただ胸水を2回取った。ある程度予想していたので、想定内のこと。

 手術の関連で起きることに関しては、時間を置けば置くほど安全性が高まる。それを基本路線として治療した。2回目の胸水措置(2月20日)でほぼ完結したと思う。

 病気はコントロールできた。ただ、体力。手術して良かったというような満足感はまだ先だと思うので、ご自身から(お言葉として)出るまでは、心臓外科医としては緊張の糸が解けない。


天野篤教授

蓮田市出身。蓮田南小が校から埼玉大学附属中学校、県立浦和高校を卒業した埼玉っ子だ。日大医学部を卒業し,心臓血管外科の専門医の道へ。人口心肺装置を使わないで心臓手術をする「オフポンプ手術」のトップドクターになった。これまでの手術の実績を買われ、東大医学部の主治医団から天皇陛下の手術を依頼された。インタビューは、順天堂大学の心臓血管外科と提携関係にある、戸田中央総合病院(戸田市本町1丁目)で行った。