東京電力福島第一原発事故について、気象庁が放射線物質の拡散予測を連日行っていたにも関わらず、公開されていなかった問題が明らかになりましたが、気象庁は関連資料（PDF）を昨日より公開し始めました。

気象庁の該当ページ（http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/eer_list.html）

（参考までに）資料（PDF）にはこんな図が掲載されています。

＜流跡線＞（上図）
ある地点から放出された物質が、大気の流れに沿ってどのように流されるかを推定し、一定時間間隔でその位置を記入し結んだもの。下図では、４月４日から７日（グリニッジ標準時間）までの間に、地上より500m（▲）、1500m（■）、3000m（★）の高さでの気流の流れ予測が６時間おきにマーキングされています。

＜地上から標高500メートルまでの大気中の濃度分布＞（下表）
ある地点を通過する放射性物質の濃度について、24時間間隔で72時間先まで時間積分し、同じ値となる地点を結んだもの。単位は、放出の想定にあわせ、仮にBq・s/m3（ベクレル秒毎立方メートル）としています。

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＜地上への降下量＞

事故発生時から最終予報時刻までに大気の流れによって運ばれた放射性物質が雨や風によって地表面へ降下する量を計算し、同じ値となる地点を結んだもの。単位は、放出の想定にあわせ、仮にBq/m2（ベクレル毎平方メートル）としています。
下図では、４月４日から７日（グリニッジ標準時間）までの間の拡散範囲の予測が図示されています。
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ただし、この資料をみるにあたっては次の注意点があります（気象庁ホームページより転載）。

  • これらの計算結果は、IAEAの指定する放出条件に基づいて計算したものであり、いわば仮定に基づくものであって、実際に観測された放射線量等は反映されていません。
  • 当庁の同業務における計算の分解能は100km四方と、避難活動等の判断にとって極めて粗い分解能で行われているものであり、このため、この結果は国内の対策には参考になりません。

ドイツ気象サービスによる、放射線物質拡散シミュレーションもそうですが、これらの図は、大気の流れに乗ると気象条件によりどの範囲に運ばれるかという予測を表したものです。

広範囲に拡散されればされるほど、放射線物質は希薄化されるということは確実ですが、福島第一原発より、どのくらいの放射線物質が放出されているかのデータが公表されていない（測定できていない？）ために、実際にどのくらの量の放射性物質が降ってくるかという目安を表したものではありません（ドイツ気象サービスの図では色が濃いところがただちに危険ということではありません）。

あくまで、予想される気象条件から、大気の流れにのると、放射性物質は（遠隔地になればなるほど微量になりますが）このような地域に拡散することが予想されるというイメージのようです。

放射性物質の量については、これまでどおり、各地で測定されている値や浄水場における測定結果などに注意することが重要です。埼玉の場合、測定されているデータを見る限り、まだ大きな危険を伴うレベルではないようです。

ただし、放射線物質の拡散範囲予測を参考にすると、今後、福島第一原発から放射線物質が大量に放出され続けると、気流に乗って放射線物質が運ばれてくる危険が大きいわけですから、今は一刻も早く、放射線物質放出をストップさせることと、さらなる爆発が起こらないことを願うのみです。

現場で命をかけて作業にあたられている方々のことを思うと本当に胸が痛くなるのですが、同時に、この事故への対応で露呈した政府や国の機関の中にある「無責任体制」を生む仕組みについて、怒りを感じつつ、大いに問題意識を持つようになりました。


なお、気象庁が公表した放射性物質拡散予測については、読売新聞ホームページにも説明記事が掲載されていますので、そちらもお読みいただければと思います。

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